「ライブ台湾」も無事2周年を迎えることができ、また、年末年始というこの時期に、自分が何故この華流業界に入ることになったのか?そのキッカケをば少々お話しようかと思います。
現在、華流・中華エンタメ業界で働いていらっしゃる方それぞれがそれぞれのキッカケを持っていらっしゃると思いますが、自分の場合もユニークです。今のところ、自分と同じ入り方をされている方を同業界でお見かけしたことはありません。
タイトルに、「キッカケは『向左走・向右走 ターンレフト・ターンライト』」と書きましたが、この映画は金城武さんとジジ・リョンさん主演の映画です。2003年の作品。Warner Bros、Rain Tree(シンガポール)、Milkyway(香港)の共同制作です。
でも、この映画を観て好きになったから、というのがキッカケではなく、自分がこの映画の作り手側にいたから、というのがキッカケです。
実は自分は当時、ワーナーのアジア・パシフィック部門に在籍しており、リージョン3版のDVDの制作にかかわっていました。
その時の経験がキッカケになって、台湾発の華流ドラマというものを知るようになり、また、台湾発のC-POP音楽というものを知るようになりました。
自分は、かれこれワーナーには9年ほどいましたが、最後の3年はアジア・パシフィック部門で東アジアの10カ国のマーケットを見ていまして、いろいろ出張にも行きましたが、台湾・香港は思い入れが強かった場所です。
当時ワーナーの映画部門では、ハリウッド映画の配給だけではなく、ローカル・マーケットに合ったローカルの映画を制作して配給して行こうという機運が出て来ていました(現在、日本のワーナーも『硫黄島』とか『Death Note』など、ローカル・プロダクションに力を入れていますね。)。その初期のプロジェクトの一つがアジア・パシフィック地域における『向左走・向右走』でした。
監督に香港のジョニー・トー&ワイ・カーファイ、主演は台湾の金城武と香港のジジ・リョン、助演には本作品で第40回金馬奨助演女優賞を獲得したテリー・クアン(お弁当デリバリーの役)、それから、シンガポールの人気俳優エドマンド・チェン(医者役)が出演、原作は台湾の絵本作家Jimmy Liao(ジミー・リャオ。でも、業界のライターさんから台湾では”ジミー”とのみ表記するのだと指摘されました。確かにDVDの表紙には「幾米絵本改編」と表記されています。当時の作品資料~香港で書かれた英語版資料~ではJimmy Liaoと書かれてたので、自分はずっとジミー・リャオと読んでました~)、というように、香港・台湾・シンガポール連合で創られた汎・東アジア映画でした。
そして、主題曲は広東語版が香港のジジ・リョン、北京語版はシンガポール出身のステファニー・スン(孫燕姿)。
そうなんです、現在のC-POP界の歌姫、あのステファニー・スン(孫燕姿)です。実は、この作品がキッカケで自分は孫燕姿というアーチストの存在を知り、その歌声に魅了され、台湾C-POPに興味を持つようになりました(90年代の香港映画ブームの時に、香港C-POPを少しかじりましたが、それほどお金を注ぎ込むようなことにはなりませんでしたが、孫燕姿との出会い以後、台湾C-POPにはかなりお金を注ぎ込んでいます。出張に行く度に大量にCDやVCD・DVDを買い込む習性が着いてしまいました)。香港の映画担当者から送られて来たステファニーのアルバムには、日本の倉木麻衣さんの楽曲の北京語版も収録されていて、意外感もありましたが、やはり何と言ってもステファニーの天使の歌声に感銘を受けました。
ステファニーが歌う北京語版主題曲は、映画本体では使われておらず、宣伝・広告用に使われていただけだったので、ぜひR3版DVDの「特別映像」に収録したいと思って、権利元のワーナー・ミュージックと交渉をしたのですが、残念ながら、DVD制作までに権利をクリアにすることが出来ず、残念なことをしました。
実は、DVD制作にあたっては調整ごとが多くて、上記の特別映像の収録以外にも、いろいろと大変でした。というのも、普通は、ハリウッド本社で作られたハリウッド映画をアジアで流通させるだけなのでジョブ・フロ-は整備されているのですが、ローカル制作の映画の場合には、マスターの制作から自分たちローカルで仕切らなければならない、という初のケースだったのです。
なので、R3の中国語字幕はどうする?字幕フォントはどうする?どの字幕言語までカバーする?映像特典は何をいれる?DVDジャケットのデザインはどうする?DVDケースは何色にする?などなど、多くの問題をクリアにして行かなければなりませんでした。台湾・香港チームとのやり取りも膨大で、メールのやり取りだけで200近く行っていました。
でも、それだけ苦労しただけあって、思い入れは大きいですし、愛着があります。
作品自体の評価については、残念ながら、あの最後の「地震オチ」のところはガクっと来ました。せっかくその直前のシーンまでいい感じで来ていて、2人が外国に旅立つために部屋を出る直前に電話を掛けるシーンのところでは、恥ずかしながらホロリと涙するところまで行っていたのですが、地震のところで興ざめしてしましました。
実はこの映画、試写はワーナー香港の映画部の試写室で観せてもらったのですが、その時のフィルムはオリジナル音声に英語字幕と北京語字幕が付いたものでした。当時はまだ中国語の能力は高くはなかったので、英語字幕を追いかけながらの鑑賞でしたが、ゆっくりとした詩的な展開だったので、十分楽しめました。今思うと懐かしいです。
それから、この映画とはもう一つ縁があります。
自分が初めて台湾に行ったのは、2002年の秋。出張ではなく、プライベートでした。そして、まだワーナーのアジア・パシフィック部門に異動する前です。実は、映画『向左走・向右走』は、自分が初めて台湾を訪れた2002年の秋に撮影されていたようでして、映画の最後の方に金城さんとジジ・リョンが徘徊する西門町の巨大広告群は、まさに自分が台北に行っていた時と同じ広告のものでした。旅行写真に写っています。なんだか運命的な何かを感じます。
『向左走・向右走』の映画の始まりは、東区の横断歩道、雨のシーンで始まりますが、傘を持って行き交う人の向こうに見える101タワーはまだ建設中です。それから、ベアトリス・シューさんが出演していたんですね!映画の冒頭部分、金城さんにまとわり付く女の役はベアトリスさんです。今年の春先、彼女の交通事故での死去が大きなニュースとなりました。「ライブ台湾」ニュースで異常なアクセス数を記録しました。
さて、ここまで書いてみてフト気づいていみると、最初は「少々」のつもりだったのに、だいぶ文字数が行ってしまいましたので、華流ドラマとの出会いは明日にでも書き綴りたいと思います。
予告編的に言っておきますと、華流ドラマとの出会いのキッカケは、『流星花園』ではなく、『愛情白皮書~あすなろ白書』でした。それでは、また明日にでも。
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